メンタルメンテ
03
先生の同級生だという樋口さんの実家は、民宿を営んでいるという。先ほどひめゆりの塔に居たのは、観光客相手にナビしていたからだと聞かされた。
「民宿っつってもね、この辺立派なホテルたくさんあるじゃん? うち、空港から離れてるし、滅多にお客さんなんて来ないんだけどね」
それにしてもと呟いて、運転しながらバックミラー越しに興味津々といった様子でこちらに視線を寄越す。
「君たち大学生でしょ? 友人って言ってたけど、松本とどこで接点あったわけ?」
一瞬、黒川さんが口を開きかけたけど、それを制して俺が答えた。
「うちの姉と、先生のお兄さんが結婚したんです。それでその縁あって俺が先生のところに同居させてもらってて…」
「あ、そうなの? てか、一緒に住んでんの松本と!?」
俺の発言に、樋口さんが目を瞠っているのが鏡越しに見て取れた。
そんなに驚くことだろうか?
黒川さんと二人顔を見合わせると、樋口さんが続けた。
「…すげえな。君、相当心広いんだな…えーと…」
「東郷です。こっちが黒川さん」
今の今まで忘れてた自己紹介を済ませると、樋口さんが感心したような声を上げた。
「じゃあ東郷くんは、松本と親戚になるわけだ」
「そうですね…」
鏡越しに目が合い、思わず逸らした時、不意に樋口さんの口の端が上がった気がした。しかし、もう一度見ても変化はなかった。気のせいだったのだろうか。
窓越しに広がる鮮やかな海と空の青に目を奪われそうになりつつ、彼に聞いておかなければならないことを思い出して、俺は座席の身を乗り出して運転席の樋口さんに尋ねた。
「…あの、さっき昼間、先生のこと『元恋人』って言ってましたよね…?」
「え? あ、そうだっけ?」
覚えてないのかよ。
俺が脱力するのと同時に、黒川さんが大きな溜息を吐いた。
「あ、そろそろ着くよ」
樋口さんが俺たちの様子を気に掛けることなく明るく言った。
樋口さんの実家は、白い外壁の赤い屋根の3階建ての一軒家だった。ちゃんと屋根の上にはオスとメスのシーサーがいらっしゃる。それ以外は、ぱっと見、外国の小さなペンションのようだった。庭には南国特有の色の濃い赤い花がたくさん植えられていた。植物音痴な俺でも名前が分かるのはハイビスカスとブーゲンビレアくらい。庭の隅に犬小屋があって、雑種であろう真っ黒な犬が赤い首輪で繋がれていた。俺たちが通りかかると、嬉しそうに黒い瞳を輝かせて尻尾を千切れんばかりに振って後ろ足で立ってこちらに前足を猫のように曲げている。招き猫ならぬ招き犬のようだ。同じ真っ黒な毛並みだがポメラニアンよりこちらの方が愛想が良さそうだ。余程人懐っこい犬らしい。番犬にはならなさそうだ。
「ただいま、内蔵助」
「内蔵助…」
樋口さんの物凄いネーミングセンスに先生と同じものを感じ取っていると、玄関の方へと案内された。
「入ってすぐ右手が食堂なんだ。そこで待ってて。アルバム取ってくるから」
やはり民宿というよりは、ペンションに近い。綺麗に磨かれて滑りそうなフローリングに、天井にはよく映画で見るプロペラみたいなやつが回っている。玄関入って正面に二階へと続く階段があり、左手に無人のカウンター。樋口さんの言っていた右手には4人掛けのテーブルが2つと6人掛けのテーブル1つ。あとはカウンターとなった食堂が広がっている。6人掛けテーブルの向こうには窓が開け放たれていて、先ほどの赤い花々をじっくりと観察できる。内蔵助も犬小屋の前でオモチャに夢中でじゃれているのが窺えた。
黒川さんと4人掛けの方に並んで座ると、しばらくしてアルバムらしきものを抱えた樋口さんが下りて来た。
「ごめんお待たせー。何飲む? そこに立ってるメニューから選んで。んで、はいこれアルバム」
分厚い高校卒業アルバムを手渡され、俺たちはメニューを見るより先に、アルバムに食いついた。それを見た樋口さんが呆れたように笑った。
「飲み物よりそっちかい。んじゃ適当でいい?」
「あ、はい、すみません」
黒川さんが代わりに返事してくれたのを聞きながら、もどかしく厚いページを繰る。
「先生って…」
「確か7組だったって」
「よく知ってるねー」
俺の言葉に、カウンターの方で飲み物を用意してくれてる樋口さんが感嘆の声を上げる。
「高校3年間ずっと7組だったって聞いたことがあって…」
以前、先生に高校時代どんな学生だったかを尋ねたことがある。そうしたら、期待を裏切らず一言、彼はこう言った。
「毎年クラス替えがあるにも関わらず、3年間7組という強運を持った高校生だった」
…そういうこと聞きたいんじゃないっつの。
相変わらず煙に巻くのが大好きな人だとその時は思ったのだが。
そう、先生は聞かれてもなかなか自分のことを話さない。聞いてもはぐらかす。俺はどんな先生でも知りたいって思うのに、彼はその俺の気持ちをわかっていないのだ。
だから、樋口さんに先生の過去を教えてあげると言われたとき、後で絶対に怒られると思ったけど、それでも知りたいって思ったんだ。
教えてくれないのなら、自分から聞きにいってやるって。

東郷視点です。短くてすみません。
&中途半端なところで切ってます。すみません。
「民宿っつってもね、この辺立派なホテルたくさんあるじゃん? うち、空港から離れてるし、滅多にお客さんなんて来ないんだけどね」
それにしてもと呟いて、運転しながらバックミラー越しに興味津々といった様子でこちらに視線を寄越す。
「君たち大学生でしょ? 友人って言ってたけど、松本とどこで接点あったわけ?」
一瞬、黒川さんが口を開きかけたけど、それを制して俺が答えた。
「うちの姉と、先生のお兄さんが結婚したんです。それでその縁あって俺が先生のところに同居させてもらってて…」
「あ、そうなの? てか、一緒に住んでんの松本と!?」
俺の発言に、樋口さんが目を瞠っているのが鏡越しに見て取れた。
そんなに驚くことだろうか?
黒川さんと二人顔を見合わせると、樋口さんが続けた。
「…すげえな。君、相当心広いんだな…えーと…」
「東郷です。こっちが黒川さん」
今の今まで忘れてた自己紹介を済ませると、樋口さんが感心したような声を上げた。
「じゃあ東郷くんは、松本と親戚になるわけだ」
「そうですね…」
鏡越しに目が合い、思わず逸らした時、不意に樋口さんの口の端が上がった気がした。しかし、もう一度見ても変化はなかった。気のせいだったのだろうか。
窓越しに広がる鮮やかな海と空の青に目を奪われそうになりつつ、彼に聞いておかなければならないことを思い出して、俺は座席の身を乗り出して運転席の樋口さんに尋ねた。
「…あの、さっき昼間、先生のこと『元恋人』って言ってましたよね…?」
「え? あ、そうだっけ?」
覚えてないのかよ。
俺が脱力するのと同時に、黒川さんが大きな溜息を吐いた。
「あ、そろそろ着くよ」
樋口さんが俺たちの様子を気に掛けることなく明るく言った。
樋口さんの実家は、白い外壁の赤い屋根の3階建ての一軒家だった。ちゃんと屋根の上にはオスとメスのシーサーがいらっしゃる。それ以外は、ぱっと見、外国の小さなペンションのようだった。庭には南国特有の色の濃い赤い花がたくさん植えられていた。植物音痴な俺でも名前が分かるのはハイビスカスとブーゲンビレアくらい。庭の隅に犬小屋があって、雑種であろう真っ黒な犬が赤い首輪で繋がれていた。俺たちが通りかかると、嬉しそうに黒い瞳を輝かせて尻尾を千切れんばかりに振って後ろ足で立ってこちらに前足を猫のように曲げている。招き猫ならぬ招き犬のようだ。同じ真っ黒な毛並みだがポメラニアンよりこちらの方が愛想が良さそうだ。余程人懐っこい犬らしい。番犬にはならなさそうだ。
「ただいま、内蔵助」
「内蔵助…」
樋口さんの物凄いネーミングセンスに先生と同じものを感じ取っていると、玄関の方へと案内された。
「入ってすぐ右手が食堂なんだ。そこで待ってて。アルバム取ってくるから」
やはり民宿というよりは、ペンションに近い。綺麗に磨かれて滑りそうなフローリングに、天井にはよく映画で見るプロペラみたいなやつが回っている。玄関入って正面に二階へと続く階段があり、左手に無人のカウンター。樋口さんの言っていた右手には4人掛けのテーブルが2つと6人掛けのテーブル1つ。あとはカウンターとなった食堂が広がっている。6人掛けテーブルの向こうには窓が開け放たれていて、先ほどの赤い花々をじっくりと観察できる。内蔵助も犬小屋の前でオモチャに夢中でじゃれているのが窺えた。
黒川さんと4人掛けの方に並んで座ると、しばらくしてアルバムらしきものを抱えた樋口さんが下りて来た。
「ごめんお待たせー。何飲む? そこに立ってるメニューから選んで。んで、はいこれアルバム」
分厚い高校卒業アルバムを手渡され、俺たちはメニューを見るより先に、アルバムに食いついた。それを見た樋口さんが呆れたように笑った。
「飲み物よりそっちかい。んじゃ適当でいい?」
「あ、はい、すみません」
黒川さんが代わりに返事してくれたのを聞きながら、もどかしく厚いページを繰る。
「先生って…」
「確か7組だったって」
「よく知ってるねー」
俺の言葉に、カウンターの方で飲み物を用意してくれてる樋口さんが感嘆の声を上げる。
「高校3年間ずっと7組だったって聞いたことがあって…」
以前、先生に高校時代どんな学生だったかを尋ねたことがある。そうしたら、期待を裏切らず一言、彼はこう言った。
「毎年クラス替えがあるにも関わらず、3年間7組という強運を持った高校生だった」
…そういうこと聞きたいんじゃないっつの。
相変わらず煙に巻くのが大好きな人だとその時は思ったのだが。
そう、先生は聞かれてもなかなか自分のことを話さない。聞いてもはぐらかす。俺はどんな先生でも知りたいって思うのに、彼はその俺の気持ちをわかっていないのだ。
だから、樋口さんに先生の過去を教えてあげると言われたとき、後で絶対に怒られると思ったけど、それでも知りたいって思ったんだ。
教えてくれないのなら、自分から聞きにいってやるって。
東郷視点です。短くてすみません。
&中途半端なところで切ってます。すみません。
Comment
ああ、樋口さんのほうが一枚も二枚も上手ですよ。
東郷くん、がんばれ〜!
黒川くんももうちょっと東郷くんのフォローしたって〜!
東郷くん、がんばれ〜!
黒川くんももうちょっと東郷くんのフォローしたって〜!
- #b8azS2fc
- 朔田
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続きを楽しみに待ってました♪
東郷、ジェラシーだけじゃなかったんだ。先生のこと、どんなことでも知りたかったんだね(^^)
むむ。じゃあ、樋口氏と先生の本当の関係は何なのかしら??
沖縄のペンションなカンジ、いいですねー♪いいなぁ沖縄。こう寒いと、ますます行きたくなりますねぇ。
東郷、ジェラシーだけじゃなかったんだ。先生のこと、どんなことでも知りたかったんだね(^^)
むむ。じゃあ、樋口氏と先生の本当の関係は何なのかしら??
沖縄のペンションなカンジ、いいですねー♪いいなぁ沖縄。こう寒いと、ますます行きたくなりますねぇ。
- #-
- テレサ
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朔田さん♪
コメントありがとうございます♪
樋口さん、可愛い男の子をさらって何を企んでいるんでしょうか…?しかもあんた仕事中じゃないのというツッコミは噛み殺しておいてください。休憩中です。(言い切った!)
今回、クロの存在感皆無ですね……!!ご、ごめんクロ!なんとか東郷を守ってやって…
テレサさん♪
コメントありがとうございます♪
お待たせしましたー!何でも知りたい涼太くんが今回顔を覗かせています。この旅で彼は一皮剥けてオトナになってくれるといいんですが…
樋口さんと先生の関係は…もうすぐ明かしますのでお待ち下さい。笑
ペンション出てきましたが、私生まれてこの方、ペンションに泊まったことがな……あ、げほっごほっ……わ、私ももう一度行きたいです沖縄!
コメントありがとうございます♪
樋口さん、可愛い男の子をさらって何を企んでいるんでしょうか…?しかもあんた仕事中じゃないのというツッコミは噛み殺しておいてください。休憩中です。(言い切った!)
今回、クロの存在感皆無ですね……!!ご、ごめんクロ!なんとか東郷を守ってやって…
テレサさん♪
コメントありがとうございます♪
お待たせしましたー!何でも知りたい涼太くんが今回顔を覗かせています。この旅で彼は一皮剥けてオトナになってくれるといいんですが…
樋口さんと先生の関係は…もうすぐ明かしますのでお待ち下さい。笑
ペンション出てきましたが、私生まれてこの方、ペンションに泊まったことがな……あ、げほっごほっ……わ、私ももう一度行きたいです沖縄!
- #-
- イチゴ
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p-g様♪
内緒コメありがとうございます♪♪お返事遅れて申し訳ないです!
内蔵助に食いついていただいて嬉しいです♪たまたま赤穂浪士のお話やってたので、つけちゃいました☆TANNJUNN☆赤穂浪士大好きなので☆
卒アル、7話でネタバレしましたが…普通でごめんなさい…!とりあえず眼鏡だけは掛けさせておきました!
オペレッタツアー!イイですね!ネーミングが素晴らしいです!!彼らと行くと、もれなくトラブルがくっついてきますが、大丈夫でしょうか?笑
内緒コメありがとうございます♪♪お返事遅れて申し訳ないです!
内蔵助に食いついていただいて嬉しいです♪たまたま赤穂浪士のお話やってたので、つけちゃいました☆TANNJUNN☆赤穂浪士大好きなので☆
卒アル、7話でネタバレしましたが…普通でごめんなさい…!とりあえず眼鏡だけは掛けさせておきました!
オペレッタツアー!イイですね!ネーミングが素晴らしいです!!彼らと行くと、もれなくトラブルがくっついてきますが、大丈夫でしょうか?笑
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- イチゴ
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