メンタルメンテ

 
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25
 
 甘い。
 僕は基本的に苦手な食べ物がない。甘いのも辛いのも酸っぱいのも、基本的に何でも食べる。だから男子は苦手率の高い生クリームも平気で平らげる。

「…ん…ッ」
 甘い。ここのケーキは甘さがきついな。
「…美味しいですか?」
 頭上から渚の色っぽい声が降ってくる。台詞と同時に、前髪を掻きあげられる。口と手はそのままに目だけを上げると、ソファに座り満足げに笑んだ渚が少し息を乱して僕の髪を梳く。僕はそれに答えずに夢中で舌を這わせてクリームを舐める。きつい甘さと同時に、生臭い苦味が口の中で混じる。体積を増して先端からじわじわと濡らすそれに、渚が机の上に手を伸ばして掬い取った生クリームを擦りつける。僕はその指ごと口に含む。床にしゃがみ込み、渚の足の間に顔を埋めて何してんだとぼんやり思う。ケーキ食ってんのかエロいことしてんのかよくわからなくなってきた。
「…っは……、ンぐ…」
「…祐輔さん…」
 ぐっと少し強く前髪を掴まれて、顔を上げさせられる。唇の端から零れる。顎を伝う唾液を、親指で拭われた。それを、渚が自分の口元に持っていって僕に見せ付けるように舐めると、床に直にしゃがみ込む僕の脇の下に腕を回す。するとそのままひょいと持ち上げて立たせた。そのまま腰に手を回されて、ソファに座った渚の膝の上に向かい合うように座らされる。
「床、冷たいでしょ?」
「い、いや…だけどお前…」
 なんだこれ。すごい恥かしいんですけどっ。間近に迫った渚が僕の顔を覗き込むようにして口付けてくる。甘いと嬉しそうに呟く渚の下唇を噛むと、冷たい手が制服の裾から侵入してきた。ぞくりと肌が粟立つ。その僕の様子に気づいたのか、渚が囁くように言った。
「…寒いから服着たまましましょうか」
 温度がないんじゃないかと錯覚してしまいそうに冷たい指先が、僕の制服の下で確かめるように丁寧に蠢く。指先であばらをなぞられ、背骨を撫でられ肩甲骨を引っかかれる。薄っぺらい胸の突起を親指の腹で潰すように捏ねられて変な声が洩れる。温度の低さにより既に立っていたそこに渚が制服の上から舌を這わせた上、軽く歯を立てた。
「っあ、っ」
「可愛い声…」
 そう囁く渚の方が余程色っぽい声をしている。
 いつもは馬鹿で呆れるようなことしか発さない口が、僕を煽るために甘い言葉を囁いたり官能を煽るために普段では使わないような言葉を発するのは、もう既にその時点で僕は彼の術中に嵌まっているとしか思えない。
 衣服の上から股間を撫でられ、軽く揺すられて思わず背を仰け反らせた。
「きつそうですね、ここ」
 渚の色気たっぷりの声に、無意識に唾液を呑むと小さく笑われる気配がした。つ、と人差し指だけでなぞられ、むず痒いような何ともいえない衝動が駆ける。羞恥を堪えて命令する。
「…触れよ、早く」
 渚が驚いたように、膝に座って少し目線の高い僕を見つめる。が、不意に嬉しそうに唇を歪めた。そのにやにやした表情のまま、無言で僕のベルトのバックルを外すと、ボタンを外してファスナーを下ろす。その緩慢とも思える動作に、焦らされている気になってきた。
「ちょっと腰浮かせてください」
 渚の指示に黙って言う通りにすると、膝の辺りまでずらされた。全部脱がせる気はないらしい。しかし、渚の膝の上に足を跨いで座っていたため、中途半端に引っかかった制服のズボンが邪魔なので、結局渚は右脚だけ引っこ抜いて左脚に衣服を纏わりつかせたまま、僕の腰を引き寄せた。それから何やらごそごそと自分の上着のポケットを探って目的のものを出すと、口元に持っていって歯で噛み切るようした。
「…なに?」
 ゴムではないらしい。僕の不審げな声に、渚がにやりと笑んだ。
「じっとしててください」
 その声と同時に、甘ったるい匂いが鼻につく。非常に覚えのある匂い。それが、渚の指に零れて僕の後方に回った。
「! お前、それ…!」
「いや、さっきケーキ取ってくるときに見つけて、丁度いいなーって」
 ぬるりと滑って甘ったるい匂いを放つ渚の長い指が入り口を擦る。馴染ませるように、ゆっくりゆっくり指が埋め込まれていくのが分かる。甘い匂いに、苦手ではないとは言え吐きそうになる。
 渚が使ったのは、うちの店のサイドメニューのスコーンにつけるハチミツだった。倉庫の隅に箱ごと常備してある。期限がもうすぐ切れるので、返品しようとまとめておいてあったやつを持ってきたらしい。
 畜生、やっぱこいつ馬鹿だ。こんなもん使ったら、もう二度とスコーン運べないだろが。
「あっ、く……ぅ」
「今日はクリスマス仕様なんで、前も後ろも甘いってことで」
「死ね、本当に死ねっ。クマのプーに襲われろっ、誤ってスズメバチ飲み込めっ」
 僕の罵倒がヒートアップするにつれ、渚の長い指が埋まっていく。時間を掛けて解されていく。甘い香りと音が充満する。今日を境に、仕事場が、甘い記憶に書き換えられるんだろうなと他人事のように考える。
「う、ン…っ」
 ぴくんと反応した僕を見上げて、渚が僕の顎を舐める。そのまま指を増やして緩やかに抜き差しを繰り返す。自然に腰が上ずるのを、腕を回され引き止められる。僕も渚の首に腕を回してしがみつく。指の根元まで突っ込まれて中を探るようにそのままの状態で指先を動かされるとびくびくと腰が揺れた。堪らずに声を上げると、少し息を乱した渚が僕の腰を抱え直して、ゆっくり指を抜いた。急に詰まっていたものがなくなって、物足りないように奥が疼くのが分かって無意識に赤面する。
 渚が僕の名を呼ぶと、そのまま下から徐々に埋め込もうとした。反射で膝を使って腰を浮かせた僕を留ませるために、渚が僕の腰に腕を回して固定する。
「あっ、ちょ…っ、座ってとか…」
「…ゆっくりでいいから…腰、下ろしてください」
 僕が抗議の声を上げると、渚の切羽詰ったような声が返ってくる。どうやら逃げられないらしい。渚の興奮したような荒い息遣いにそそられ、僕は仕方なく諦めた。
「…ゆっくり…」
 自分に言い聞かせるように、ゆっくり腰を下ろす。ハチミツの力を借りてぬるぬると指で慣らされたそこに埋まっていくのが分かる。
 先ほどまで寒かったはずなのに、全身熱い。はあはあと色っぽい呼吸音が事務所を覆う。
 深呼吸を繰り返して、時間を掛けて腰を下ろすと根元まで呑みこんだのが分かった。自分の体重で、いつもとは違った奥まで届いて変な気分になる。
 お互い呼吸を整えながら見詰め合ってから何だか可笑しくなって声を出して低く笑い合うと、繋がっているから変な振動が伝わって更に可笑しくなった。
「…気持ちイイです」
「…それはよかった」
「動いていいですか?」
「…うん」
 静かに頷くと、渚が笑って口付けてきた。口を合わせたまま、ゆっくり腰を動かす。ぎっと、古いソファが鳴った。
 片手で僕の腰を支えて、もう一方の手で僕のものを扱く。甘い力を借りずとも滑ったそれは渚の手の中で揺らめいて滴を垂らせるのが互いの腹の間で見える。ソファの軋む音と互いの呼吸の音で、官能が高められていく。渚が下から僕のいい場所を突き上げてくる。

 本人には言っていないが、渚は上手い。ちゃんと僕を満足させようと自分本位じゃないセックスをしてくれる。それが、コトに及ぶ前から事後まで伝わってくるのだ。初めが初めだったので、付き合ってからどんなこと要求されるんだと不安になったりもしたけれども、結局こうなった。渚はちゃんと、僕を大切にしてくれるのだ。
 …ってこんなとこでこんなことしといて説得力も半減だけど。
 別にいいよな。だってクリスマスだもん。
 忙しかったごほうびもらってもバチ当たらないだろ。

 限界が近いのか、渚が真下から僕を突き上げたまま、何かを堪えるように何度も唾液を飲み込む音がした。
「…渚…」
 ワックスで固められた渚の頭を撫でると、彼が僕の首筋に顔を埋めて切羽詰ったように言った。
「…イキたくない…」
「困る」
「…もう、ちょっと…こうしてたいです」
「…僕もイキたくて限界なんだよ…っ」
 甘い吐息と共に、渚の右耳に噛み付くように囁くと、渚が驚いたように両目を見開いてから、明らかに情欲の浮いた瞳で笑った。
「…じゃあ、遠慮しなくていいですか?」 
「…へ? あ、ちょ、――あっ、あッ!」
 僕の了承も得ない内に、渚が僕の腰を掴んで大きく揺さぶった。先ほどとは正反対の遠慮のない動きに、堪らず悲鳴を上げた。その僕の悲鳴につられたように、渚が何度も突き上げてくる。
「…祐輔さ…っ!」
「うああ…っ! あああ!!」
 きつく抱いてくる腕を引き剥がそうと躍起になる前に、ぐっと内側から押されて堪らず吐き出すと、その僕の反応に引き摺られて渚が僕の中に放ったのを感じた。




「…最悪だ」
「最高の間違いじゃないんですか?」
 けろりと言い放つ渚をじろりと睨み付けると、彼は大人しく口をつぐんで、ぐしゃぐしゃになったケーキを箱に仕舞っている。僕は制服を整えると、渚を更に睨み付けた。 
「ハードワークで疲れてんのに中出しするし事務所でやっちゃったから仕事する度に思い出すし全身べたべたするし甘い匂いで吐きそうだし…」
「家帰ったらちゃんと全身くまなく洗ってあげますから」
「スコーン見る度に嫌な思いするし…」
「え? 仕事中に勃っちゃうってことですか? それはマズ…」
「死ねボケマジで7000回くらい死んでこいっ!!!」
 本気で蹴ってやろうかと思ったのだが、腰が痛くてそれが敵わず、ぐったりソファに寝そべる僕を見下ろして渚が嬉しそうに言った。
「よし、じゃあお家でパーティの続き、しましょっか!」
「はあ!?」
「ケーキもまだちょっとしか食べてないし、プレゼント交換もまだですしね!」
「まだする気かよ!?」
「夜はまだまだ長いですからね〜! さ、行きましょうね〜」
 にこにこそう言って、渚はいとも簡単に僕を担ぐと、事務所を出た。
 暴れる元気もなく、僕は渚の背中を思い切り抓ったのだが、渚は幸せそうに笑い続ける。
 その笑顔に癒されるなんて、僕も相当やばいとこまできてるんだなあとしみじみ自覚せざるを得なかった。
 








<END>
















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これからケーキ食べる人ごめんなさい。
そして変態でほんとすみません…












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Comment

2008.12.25 Thu 20:52  |  

あはは、私、甘党なんでウェルカムですよ〜。
ついでに変態も大好きですよ〜。
相手をいたわるえっちはいいですよね。
うちは常にえろ欠乏症なので、
たっぷり補給させていただきました。
ごちになりました〜♪
  • #b8azS2fc
  • 朔田
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2008.12.25 Thu 22:35  |  

今ケーキ食べながら読んじゃってます(爆)
生チョコケーキですww

いやぁ〜なんだかんだ言っても、やっぱりラブラブですね〜♪
こちらの甘さに、現実のケーキの甘みが増した気がしますww
ご馳走様でした(*´∀`*)
  • #-
  • 柚子季杏
  • URL
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2008.12.25 Thu 23:09  |  

今年のクリスマス、この2人に託して正解です!!
いいモン、戴きました。
最高のクリスマスプレゼント戴きました!!!

やっほい☆メリークリスマス!!!
  • #-
  • さくら.
  • URL
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2008.12.26 Fri 08:42  |  

 この2人最高…!!
 もう他に何も言うまい。




  ( ̄TT ̄)
  • #-
  • 如月久美子
  • URL
  • Edit

2008.12.28 Sun 00:42  |  

朔田さま!
こんばんは!コメントありがとうです♪そしてお返事遅くなってすみません!!
朔田さんも甘党とな!?うわい、仲間仲間〜♪ちなみに、高校時代、生クリームをボウルいっぱい食べたいと呟いたら友人に眉を顰められたくらいの甘党です私☆
甘い小道具使って更に内容も甘いという甘さの三重苦のお話でしたが、朔田さまの欠乏症に効いたとあれば幸いです。笑
甘いの苦手な人には、おえってなるんでしょうな…すみませんほんと。こちらこそ、平らげてもらってありがとうございました!笑


柚子季さま!
こんばんは!コメントありがとうございます&お返事遅くなって申し訳ないです!!
ケーキ食べながら読んで下さっていると!?うわい!甘さの倍率どーん!!あ、でもチョコならセーフですね!?(なにが?)
そうなんです、この二人なんだかんだ言って実はラブラブです。特に暗雲も吹き荒れませんでした。私の力不足です。笑
現実のケーキに甘さの倍率更にどーん、きましたか!?やったあ!大成功ですね!!
柚子季さまの甘いコメントに、私もご馳走様です♪


さくら.さま!
こんばんは!素敵コメントありがとうございますです!お返事遅れてごめんなさい〜!!
メリークリスマス!!(遅)今年は特にクリスマス関係なしで通常営業しようかと直前まで考えていたのですが、街並やらテレビやらでやたらとクリスマスクリスマス言ってるので、便乗しちゃいました☆という自分のない私、ドンマイ☆
去年はノゾミたちだったので、先生東郷にしようとも思ったのですが、奴ら沖縄行ってやんの☆(自分の所為です)…という訳で、急遽この二人に白羽の矢が。久々に甘甘ラブラブ書けて楽しかったです♪
さくら.さまにも最っ高のクリスマスプレゼントいただいたので、おあいこですね!笑


如月さま!
こんばんは〜!コメントありがとうございます♪お返事遅れてごめんなさいぃ〜!!
如月様お気に入りの渚が書けて楽しかったです☆基本ボケの子は書いてて楽ですね!そしていつも幸せそうだな渚!
この二人に嵐は訪れてないんですね〜、ふーん、そうか…
甘甘を書いてると、梅昆布茶が飲みたくなります。笑


p−gさま!
こんばんは!内緒コメありがとうございます〜♪お返事遅れてごめんなさいっ!!
「クマのプーに襲われろっ」…プーさんが本当に襲ってきたら、私泣きます。普通のクマに襲われるよりトラウマになりそうです。笑
渚、かわいいですか!?ありがとうございます!!確かにえっちのときは普通になってますね、渚…若干偉そうなのがちょっと憎らしいという…笑
この二人、生温かい目で見送っていただけると幸いです☆

  • #-
  • イチゴ
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